連歌新式の基となった連歌理論書だが、
「三句隔つべき物」は間を3句以上空ける
前回はおもに打越を嫌う、つまり間に2句以上を挟まなければ使えない組み合わせの表現について説明しましたが、今回は3句以上、5句以上、7句以上を挟まなければ使えない組み合わせについて説明します。
連歌の式目に「三句隔(へだ)つべき物」とあるのは俳諧(連句)では「三句去(さり)」と呼びます。間に3句以上挟まないと使えないということです。また付句から見て3句前(打越句のひとつ前)の句を「大打越」と呼びます。
整理すると
打越を嫌う物=二句去り=間に2句以上挟まないと使えない
三句隔つべき物(大打越を嫌う物)=三句去り=間に3句以上挟まないと使えない
五句隔つべき物=五句去り=間に5句以上挟まないと使えない
七句隔つべき物=七句去り=間に7句以上挟まないと使えない
ということになります。
ここで挙げられた事物や文字は連歌の中核となるような重要な題材なので、間隔を空けて使うよう注意を求めています。
では一覧表にしていきましょう。
第6回で示した事物の19分類では、木と草はどちらも「植物」、虫と鳥と獣はどれも「動物」にひとくくりにしていましたが、ここではそれぞれを区別しています。これは次の項目と関係しています。
[同字]の項、同じ漢字を使うには5句間を隔てる必要があります。ただし例外が次の七句隔つべきものの項で示されます。「煙」だけ七句去なのにここに登場しますが、これは「雲」が前に出てきているので、同じ〈聳物〉でも「煙」は七句だよと、ここで断り書きしたものと思われます。
同じ植物で、木類と草類というように異なる場合は三句去、同じ類の場合は五句去となります。動物の場合も鳥類・獣類・虫類に関して同様の扱い。
別の回で再述しますが、〈恋〉は5句まで連続することができる、〈旅〉〈水辺〉〈居所〉〈述懐〉〈神祇〉〈釈教〉は3句まで連続することができるという決まりがあります。ただし、いったん連続が途切れたら、次にまた同じテーマを始めるまでに間を5句以上空けなければいけないということです。
「原」の項はわかりにくいのですが、天文17年の宗巴注によれば、単なる「原」は一座一句物である、ただし松原、篠原などと言い換えれば5句を挟んで使えるということらしい。
「朝づく日、夕づく日」の項、原文は「朝月日」「夕月日」となっています。「づく」を「月」とする誤った書きかたが根付いてしまっているので「月日」と障りが生じるのです。注記で「朝の日」等と表記すべきかと、わざわざ言っています。
[同季]の項、これも別の回で詳述しますが、春の句と秋の句はそれぞれ5句まで連続できる、夏の句と冬の句はそれぞれ3句まで連続できると決められています。ただし、いったん連続が途切れたら、次にまた同じ季節を始めるまでに間を7句以上空けなければいけないということです。
「船」の項、「天盤舟(あまのいわふね)」とは神武天皇が高天原から下りてくる際に乗った船のこと。「天河舟(あまのかわふね)」とは天の川に浮かぶという想像上の船。
「衣の字」の項、霞衣とはたちこめた霞を衣に見立てた語。織女衣とは羽衣のことか? 衣河は陸奥国の、衣手杜は山城国の歌枕。
「松の字」の項、松島は陸奥国の、松浦山は肥前国の歌枕。
「竹の字」の項、竹田は山城国の歌枕。「竹河」は源氏物語の巻名。