2023-03-13

横井也有 荷風も認めた名文家(15) 也有園の紹介と「也有をタダで読む方法」

横井也有シリーズの最終回、今回は番外編として、名古屋市の東山動植物園に設けられた「也有園」の紹介、それから「也有作品をタダで読む方法」についてお話しします。

東山動植物園に作られた也有園

戦後の1948年、「文化復興の一翼となれかし」という目的から、郷土の文人である也有をしのぶための也有園が東山動植物園の植物園のほうに築庭されました。

3月8日、植物園を訪問した私を、元園長の伊藤悟さんが案内してくださいました。伊藤さんは「横井也有翁顕彰会設立準備会」(横井也有ファンクラブ)の世話人として精力的に活動されています。

横井也有翁顕彰会設立準備会世話人で、元植物園長の伊藤悟さん

園内には植物を詠んだ也有の発句が50句選ばれて石碑やパネルで紹介され、実際の植物が同じ場所に植えられています。

「柿一つ落ちてつぶれて秋の暮」の也有句碑。右横には実際に柿の木が植えられている
 
「宿かさぬ人の垣根や木瓜の花」のパネル。ちょうど木瓜が咲いていました

也有園開設当時は建築物としては休憩所があったくらいでしたが、1967年に屋敷門が移築されるとともに回遊式の和風庭園が整備され、2012年には市内の茶道師範の方の寄付により茶室「宗節庵」が完成。園の風景が作り上げられていきました。


也有園開設当初から設けられていた休憩所
 

この長屋門は尾張藩士の兼松家のものを移築

「也有園」の石碑。奥に見えるのが茶室「宗節庵」

植物園の見どころとしては、現存するものでは日本最古の温室(国の重要文化財)、白川郷から移築された合掌造り、椿園や梅園などがありますが、とくに奥池の周囲に植えられた紅葉が水の面に映るさまは人気があるということです。

また東山古窯群の窖窯(あながま)跡が園内で発見されています。この地の窯は古墳時代の埴輪製作に携わり、その技術は後に常滑焼や瀬戸焼へと発展していきました。


東山古窯群の窖窯(あながま)跡

横井也有をタダで読む方法

次に也有作品をタダで読む方法についての研究です。

横井也有の著作はなかなか完全な形で読むのがむずかしい。『横井也有全集』全4巻を買うのがベストなのですが、経済的に手が出ないとか、本の置き場所がないといった方もいるでしょう。本を入手できたとしても、文語で書かれたものを解読するのに骨が折れる。

そういう人のために、也有やその解説書をタダで読む方法を紹介しちゃいます!(以下の情報は2023年3月現在のものです)

利用するのは、国立国会図書館デジタルコレクションです。同図書館は、著作権が切れて絶版になった書籍をつぎつぎ電子化して、インターネット上で無料で公開しています。利用するためにはまず「国立国会図書館オンライン」で利用者登録をする必要があります。

登録が済んだら、国立国会図書館オンラインのホームページに行って、検索窓にいろいろな検索語を打ち込んで本を探してみましょう。今回は「横井也有」で検索してみます。するといろいろな本が表示されます。右側に「デジタル」のマークがあり、「個人送信」または「インターネット公開」と書かれている本が、オンラインで読むことができるものです。さっそく『俳諧文庫 第6編』を見てみます。これは1898年に岡野知十の編で刊行された最初の也有全集です。


「デジタル」と書かれたところをクリックすると本の情報が出てきます。その画面で右上の「ログイン」というリンクをたどり、利用者登録で使用したIDとパスワードを入力すると、本が表示されて読めます。

この全集には、発句集として蘿葉集蘿の落葉、和漢連句集として峩洋篇、板本版鶉衣全編、俳論、石原文樵が編纂した追悼集俳諧夢之蹤等が収められています。和歌・狂歌・連句・漢詩などは含まれていません。

発句集ありづか(垤集)が入っていないのが痛いのですが、こればかりは私のブログの「也有150句選」で抄録を見ていただくか全集を入手するほかありません。くずし字で刷られた元の板本でしたら、早稲田大学の「古典籍総合データベース」で閲覧することができます。

訂正:『ありづか(垤集)』は国立国会図書館デジタルコレクションでは読めないと思っていましたが、1927年刊の『日本俳書大系 第9巻』に収録されており、ネットで読めるようになっていました。また最近、『横井也有全集 全4巻』もデジタルコレクションで閲覧可能になりました。

国立国会図書館デジタルコレクションでは他に漢詩集である『蘿隠集』が公開されており、また『正岡子規全集第11巻(アルス社の旧全集)では子規が選抜した也有俳句を読むことができます。

『鶉衣』に関心のある方は、岩田九郎著『完本うづら衣新講』が必読です(このブログでは何度が触れました)。これも国立国会図書館デジタルコレクションで無料閲覧することができます。

訂正:『完本うづら衣新講』は本稿執筆後、デジタルコレクションでの公開が終了しました。版元の大修館書店が本書を再版したことに対応したものと思われます。

公立図書館での『横井也有全集(名古屋叢書三編)』の所蔵状況は、愛知県では愛知県図書館や名古屋市図書館、稲沢市図書館など多くの自治体が所蔵しています。東京都では残念ながら国立国会図書館と東京都立図書館でしか読むことができません。

おわりに

也有について語る場合、まだ狂歌、連句、俳論などを見ていく必要があるのですが、この連載もだいぶん長くなりました。とりあえずここで打ち止めとして、機会があれば単発で也有について語りたいと思います。

今回の横井也有シリーズはこれでおしまい。